照明の省エネについて
(大西研究室)



こんばんは。大西洋平太です。以前記事があった時から十年以上経過してしまいましたが、昨今の「省エネ」がどうも間違っているようなのでこうやって再びレポートを書く運びとなりました。
世の中で言われていることが正しければ問題ないのですが、そうとは言い切れません。どういったところに問題があるのか、特に照明器具について解説していきましょう。
とは言っても、私の言うことも正しいとは言い切れないのですが、考え方の参考にしていただくと幸いです。

(2012年6月3日更新)



 主な用語

 ルーメン
  光を発生する器具全体の光の量を合計したもの。同一のルーメンであれば広範囲を照らせば暗くなり、光を集中すれば明るいが照らす範囲が狭くなる。

 白熱電球
  コイル状にしたフィラメント(金属(タングステン)製の細い繊維)に電流を流すことで熱を発生させ、その副産物として光を得る。電線をコイル状にすると抵抗ができて熱が発生することを利用した灯具。フィラメントが熱くなればよいので電源は直流でも交流でもよい。

 蛍光灯
  電子の流れをつくり管内の水銀蒸気に衝突させて紫外線を発生させ、紫外線を壁面に塗った蛍光物質に当てることで光を得る。蛍光物質の特性で光の質が変化する。電源は交流でなければならない。蛍光管と安定器の組み合わせで消費電力と明るさが異なる。

 LED
  1990年代までは主に発光ダイオードと呼ばれた。ライト(光)エミッティング(発射する)ダイオード。電流を直接光に変換する。電源は直流である必要がある。





「省エネ」の考えかた

灯具の「省エネ」というのは、宣伝されているような消費電力量だけを下げれば良いというものではない。灯具に使用されているエネルギーには、使用中の電力のほか、器具を生産する資源やエネルギー、電球を生産する資源やエネルギー、また、それらを捨てるのにかかるエネルギー、あと、運送にかかるエネルギーがある。それらの全ての合計が少なくなっているかみきわめる必要があるだろう。
20年程前のエアコンでは、まだ使用できる現有の器具を処分して新製品に替えたほうが、より使用する全体のエネルギーが抑制することができるなどということもあった。ヒートポンプなどによって効率が劇的に改善されたためである。灯具においては、50年ほども前に白熱電球から蛍光灯への移行があった。しかし、すべての灯具が蛍光灯に置き換わることはなかった。蛍光灯がもつ消費電力の小ささという利点の魅力が、点灯まで時間がかかること、器具が大型であること、初期投資額が大きいことなど欠点を完全に圧倒しなかったためであると考えられる。

とりあえず、ややこしいことは抜きにして、試しに、条件を単純化して比較を価格(かかったお金)についてだけ、購入した品はランプだけにして考えてみよう。同じソケットに適合する互換ランプである。
2012年現在1000Whあたりの電気代は22円(1Whあたり0.022円)で、60Wの白熱灯は一時間あたり54Wを消費して1000時間持つことになっている。価格は150円くらいである。対して、LED電球の60W相当は一時間あたり11Wを消費、40000時間持って価格は3000円。
40000時間あたりの価格を計算してみると、白熱灯では電気代が 54 × 0.022 × 40000 = 47520円 。電球は40個必要なので、6000円を要し、合計は53520円。対して、LED電球は電気代が 11 × 0.022 × 40000 = 9680円 。電球代3000円で合計12680円。1/4以下になっている。
電球型蛍光灯では、よく手に入る普及型のもので60W相当品が一時間あたり12Wを消費して5000時間持ち、400円である。40000時間の電気代は 12 × 0.022 × 40000 = 10560円 。電球代は400×8 =3200円で合計13760円。LEDが特にお金がかからないとは言えなくなる。

こういった計算は単純化したものだが、灯具の広告においては、使用中の電気代だけを論じて製品そのものの費用(言及される場合は「元が取れる」と説明される)、メンテナンスにかかる手間、保守費用などを無視して論じられていることもある。使用中の電気代に関しても数値を全く挙げていなかったり、挙げていても特殊な一条件のみを取り出したものであったりと、消費者が正しく判断できるようになっていない現状がある。
上の例では、40000時間とは一日10時間で約10年。トイレなどで一日2時間だとしたら50年持つ計算なので、こうなったら家そのものの耐久性を考える必要があるし、引越しなどで2年程度しか使わなければ全く製品価格の元が取れないことが分かると思う。

この現状は、消費者それぞれがデータを分析して自分に必要またはふさわしい製品であるかを判断してこなかったツケであるとも言える。広告においては判断に必要なデータを意図的に省略したり条件を特殊なものにして数値を都合の良いものに変えたりと情報を操作する一方で、データ一覧では数値と測定条件を離して表示したり字を小さくしたりとユーザーに優しくなっていないのである。また、たくさんの人が購入する製品は、たくさん売れているには違いないが、よく売れているからといっていい製品であるとは限らない。購入者がそういったカラクリを見破る習慣を養わなければ、どの製品も売り手主体の思うような広告が打たれ続ける結果となり、改善されない。

灯具については、家屋があれば同じ位置に同じ能力の品がいつも存在していなくてはならないわけだが、電球も切れれば器具だって壊れるのである。それらの価格やかかる資源や手間を無視して、電気代だけを論じても無駄なことだ。高価な器具や電球を購入して「損して得取れ」というが、本当に得をとっているのか、考えなければならない。
また、メーカーは慈善団体ではないので「地球にやさしい」などという文句は嘘ではないにしても利潤抜きで地球を守ろうとしているとは考えにくい。特にCMを打っている製品は(CMに金がかかることからもお分かりのとおり)消費者に積極的に購入して欲しい製品であるわけで、それだけ利益が大きいと考えるのが自然である。

つまり、「省エネ」という付加価値によって購入を決めたが、本来必要でなかった製品を購入することで結果的に「地球にやさしくない」状況になっているとも考えられるのである。

今回は、およそ登場順に灯具の特徴を羅列し、結論に達するきっかけとしたいと思う。



白熱電球

いわゆる普通の電球。白熱電球には、電源や電線、スイッチ以外にこれといった設備を必要としない。これらはほかの灯具でも同様に必要なものである。特に言えば、ソケットくらいのものであるが、現代の家屋には露出配線をするとは考えにくいので、ペンダントの四角フックに取り付けるのが一般的だろうか。
器具の価格はデザインが凝っていないもので400円程度、ソケットにカバー付きで700円程度、コード付き千円、ランプフードがついているもので4千円程度、バスルーム用、埋込み型のものはそれぞれの値段。

白熱電球の寿命はフィラメントが切れるまでである。電球型蛍光灯や電球互換LED球の宣伝を見ていると、通常の白熱電球(60Wで150円ほど)の連続点灯時間は1000時間ほどとなっているが、過小評価である気がする。点けぱなしであれば40日ほどの寿命となる計算だ。高価なもの(250円ほど)では2000時間だったり2500時間だったりする。
ただし、白熱電球はスイッチを入れた直後に切れる場合がほとんどである。理由は、金属の抵抗は高温ほど高くなるので、フィラメントが冷えているときには大きな電流が流れる。それが電源を入れた直後である。したがって、たいてい一瞬点灯して消えるというのが代表的な切れ方である。つまり、(古くなればそれだけ切れる可能性は高くなるが)いつ切れるかはランダムみたいなものである(パソコンのHDDの寿命とよく似ている)。

一般的な60W球が約800ルーメンを発生させるのに54Wの電力を要する(約15ルーメン/W《この数値が大きいほど効率が高い{同じ明るさを得るために少ない電力で済む}》)。100W球は1500ルーメン/90W(17ルーメン/W弱)、40Wは480ルーメン/36W(13ルーメン/W強)で、W数が高いほど効率が高い。つまり設計のしやすさ、材料コストを無視すれば明るいものが得意であるということになる。ただし、20W未満の国民球やナツメ形球では効率を下げる代わりなかなか切れないように設計されていて、消費電力の割に明るくない。

白熱電灯の利点は、器具の部品数が少なくまず壊れることは考えられない(故障率は部品点数に比例する)こと、壊れたとしても容易に交換可能であること。電球も手が届けば交換は簡単である。また、演色性が高く(太陽光と性質が似ていて、色の見え方が自然である、ということ)、色温度も低く落ち着いた雰囲気となる。また、スイッチを入れると同時に最大の明るさとなる。蛍光灯が実用化されても信号機に採用されなかった原因は、部品の少なさ、軽さの他に明滅の強さとすぐ明るいという特性にある。

欠点は、まず皆が問題にする消費電力量が大きい点。また、明るいところが好きな日本人にとって光量が不足である点。6畳程度の部屋で夜に本を読むためには60W球なら最低2つ必要である(外国の場合は部屋は暗くても必要なときに手元を明るくしするという考え方)。そのように明るい電球をたくさん設置するとそれだけ電気代が必要となる。

現在の状況でのおすすめの使い方は、たまにしか使わないか頻繁に明滅し、一回の点灯時間が短く、即座に明るさが必要であるところ。まあトイレでしょうか。
(そろそろ白熱電球自体を製造規制するらしいですが)替え球を購入する場合は100V球ではなく110Vのものにしましょう。住居に来る電源電圧はプラスマイナス5%程度の誤差がありますが、家屋内の電線で電圧降下を起こすためたいてい高くなっているものです。仮に100V球を105Vで運用すると切れる危険性が相当上昇します。110V球を使用することで、高価で多少暗いですが比較にならないほど長もちします。



蛍光灯

蛍光灯とは

家庭で一般的に利用されている蛍光灯は、蛍光管の他に、グロースタータと安定器(インバータ式ならばインバータ)を必要とする。それらをそろえたものが灯具として売られている。蛍光管の内部には水銀の蒸気が詰められており電子が通る(発光する)には蒸気が管内に均一に存在しなければならないが、直流電源だと一方の電極に水銀が集まってしまうため電源は交流を要求する。直流は交流に変換しなければならないが、日本の家庭用電源は交流のため追加の設備は必要ない。蛍光管は直管とサークルがあるが、製品としてはサークルが多い傾向である。また、それぞれに吊り下げ型とシーリング型がある。
器具は、デザインが凝っていないものでは三千円程度から、一万円程度の製品が多いように思う。

普通購入するであろう3波長型(EX)スタンダードタイプのD色直管20型が1400ルーメン(ランプのみで18W、器具全体で20W)、器具ベースで約70ルーメン/W、40型で3400ルーメン(ランプ37W、器具40W)、約85ルーメン/Wと、大きい管ほど高効率。また、20型が8000時間の寿命に対し40型は12000時間と大きい管ほど長寿命。
蛍光管はまっすぐの方が都合が良く、同じグレード(EX-D)のサークル型30型では2100ルーメン(ランプ28W)70ルーメン/W、32型2500弱(30W)77ルーメン/W、40型3200(38W)80ルーメン/Wであり、大きくなってもメリットがあまり出ない。また大きさに関わらず6000時間程度と直管に対して短い寿命となる。

従来からある銅鉄式安定器の灯具では消費電力が変わらず、明るさが5〜7%、寿命が10〜30%ダウンする。

蛍光管の寿命は、しだいに暗くなって規定の7割しか発光しなくなった場合とも決められているが、たいていは管のはしの電極が劣化して電子を放射する能力が失われたときで、電極の金属は点灯中に緩やかに蒸発し劣化するが、予熱中(点灯はじめ)のダメージが大きい。蛍光管の劣化が進むと蒸発した電極によって管のはしが黒ずんでくる。電極から電子を発射するには熱が必要なので蛍光管は必ず発熱し熱の分は損失となる。また、グロースタータは予熱を自動的、機械的に行うが、これも動作するたびに劣化する。
蛍光管が劣化すると、スタータが規定の時間予熱を行なっても電子を発射せず、予熱の動作を繰り返すことでグロースタータの劣化も促進する。また、スタータが劣化すると予熱の時間が規定通りにならず、短ければ予熱の動作を繰り返し、長ければ電極の金属の蒸発を促進して蛍光管を痛める。そのため、この両者は同時に交換することが推奨される。

安定器もまた発熱によって絶縁体などの性質が変化し、劣化する。蛍光管とグロースタータは簡単に交換できるようになっているが、安定器は交換部品が手に入りにくく高価でかつ内部にあり交換しづらいため、一般的には安定器の寿命が灯具の寿命となっている。安定器が劣化すると蛍光管が発する光がちらついて見えたり、発振してジーという音がする。蛍光管とグロースタータを交換してもなお調子が悪い場合、安定器を交換すれば90%直る。しかし、絶対に安定器が原因であるとは言い切れない点、先述のとおり修理が高価で場合によっては新規購入の方が安価である点などから、製造打ち切り後時間が経過しているなど適当な理由をつけて販売店は修理したがらないのが普通である。

安定器は、電流が小さくなる方向に変化したときには電圧を高くし、電流が大きくなる方向に変化した時には電圧を低くする役割を担う。あまり詳しく解説したサイトがないようなので、銅鉄型安定器のものについて図をもって詳説してみるが、正しいかどうかの担保はないのでご注意。








安定器という名称は、一度蛍光管に電子の流れができると電流が流れやすくなり電流量が増大して焼損する(放電が継続できなくなる)が、適当な電圧に調整して電流量を安定化し、放電を継続させる役割からつけられている。しかし安定器はそれ以外にも非常に重要な役割を担っていることがわかる。

蛍光灯の利点は、蛍光管の蛍光物質の改良によりヒトが感じることのできる光の波長域にエネルギーを集中させ、明るさを感じない光を発射しないことでエネルギーを節約して結果的に消費電力が小さくなる点である。安定器は灯具全体の電力の10〜20%程を消費しているが、それを含めても同じ(ように感じる)明るさを得るためには電力が1/4でよい。また、インバータ方式の場合(詳しいことは割愛する)は安定器とグロースタータの役割を電子回路に担わせるが、同一の消費電力で蛍光管内を流れる電子の速さを上げ、蛍光物質に電子が当たる頻度を増やすことでさらに明るくすることができる。そうなれば同じ明るさを得るために必要な電力はさらに低下し、1/5程度となる。

欠点は壊れやすいことである。まず、先述のとおりスイッチオンの時に各所にダメージを与え、頻繁な明滅に向いていない。また、安定器は(インバータも)自己の発熱で劣化する。蛍光管は低温のときは予熱不足で放電が起こらず予熱動作を繰り返し(寿命が縮まる)、高温では電極の蒸発が早まる(寿命が縮まる)。
さらには蛍光管、グロースタータ、安定器のいずれかが不調になると、他者の劣化を促進する。
付け加えると白熱電球より灯具にかかる資源量が多く、高価で重量が重くなる。重く大きく、蛍光管に水銀を含むため処分が面倒である。
また、必ず紫外線が出ること、光は物にあたって反射すると波長が変化することがあるが、目に見える光以外をあまり放出していない蛍光灯光下では、色が不自然に見える(演色性が悪い)こともあげられる。


製品の実際(家庭用)

サークル型(FCL)

蛍光灯を円形にするメリットは、灯具の重量バランスが取りやすく、ペンダントの四角フックの一点以外にネジを打ち込むことなく吊り下げられる点である。天井を痛めにくく灯具の交換が容易となる。また、デザインの自由度が高くなる。
デメリットは、管を曲げなければならないため製造コストが上がり、かさばるので運送のコストも上昇する。電子はまっすぐ飛ぶのは得意だが曲がるのは苦手のため、蛍光管の寿命がいまいち長くない。また蛍光管を金属のクリップで止めてあるためその分交換が面倒である。
以上のように、ユーザーにとって蛍光灯を円状にするメリットはない。店舗などの業務用の灯具にFCLが利用されていないところからも、デメリットの多さがうかがい知れる。

また、蛍光管そのものの特性ではないが、32Wと40Wの安定器(インバータを含む)が共通になっている、30Wのグロースタータはコンデンサ内蔵でなくコンデンサの交換ができないなどの設計の問題で、同様に明滅した場合ランプの寿命が32W>30W>40Wとなることが多いようだ。
6畳用の灯具は30Wと32Wの二段になっているものが多く、安価な灯具は32Wを消灯することで光量を調節する仕組みになっている。このような灯具では寿命が短く使用時間の長い30Wの交換頻度が高くなるのが自然である。しかし、蛍光管の販売価格は一本ごとの価格(例えば、30型一本で800円程度)よりより二本抱き合わせでの価格が2〜3割安く設定(30+32型2本組みで1300円)されていて、30W管が壊れると寿命が半分も残っている32W管も交換する方が多い気がする。
そういった点でもユーザーにメリットは少なく、地球にも優しくない設計と言える。直管の場合は2本並列でも同じ大きさであり、一方を消灯する設計であっても切れた方を交換すれば済むことなのでこのような問題は生じない。


シーリング(紐での吊り下げでなく天井に取り付けてあり、樹脂のカバーがついているタイプ)

シーリングの利点は、デザイン的に部屋がすっきりする、光源の光量が十分であるとき、光源の位置が高いだけ部屋の隅々まで照らすことができる、といったところか。
対して欠点は、蛍光管を交換する場合カバーを外さなければならず非常に面倒である点、カバー内部に虫が侵入し見栄えが良くない点。カバーの分だけ光量が減少する(暗くなる)点。また、安定器がカバー内部にあり、蛍光管が発する熱にあぶられる上に灯具が天井と密着しているため排熱が悪く、安定器が早く劣化するために器具そのものの寿命が短い点。カバーやスポンジなどの樹脂が自ら(蛍光管)が発射する紫外線で劣化して弾性を失い(カバーの場合は割れやすくなる、スポンジの場合はシールとしての役を果たさず小さい虫の侵入を許す)機能は問題なくとも見栄えの点で交換を余儀なくされることがある点などたくさんある。

以上のようにサークルの蛍光管とシーリングの灯具には欠点が多いと考えます。取り付ける側の器具選定基準としてはデザイン性がかなりのウエートを占めているか、蛍光管や灯具の交換需要を期待していると考えられても仕方ないと思います。蛍光灯のメリットを最大限に生かすためには直管の露出型か吊り下げ型だと考えますが、かつてあった20W直管の灯具は四角フックになった時期にことごとく廃止されており、家庭用の製品が非常に少ないのが現状です。


電子点灯管

放電して光るタイプのグロースタータは、バイメタルを使って予熱の時間を機械的に取る。放電によってつながる時間が短いので、上の図の1.と2.の動作を何回も繰り返している(繰り返すたびに電極が冷えるので、予熱の効率が悪く点灯までに時間がかかる)。電子点灯管は電流を流す時間をタイマー回路などで制御して、点灯の効率を上げようとしたものである。点灯管そのものに機械的動作がなくなるため、機械的劣化がなくなる。また、予熱の回数を減らせるために蛍光管の寿命も長くすることができる。点灯してしまうと通常のグロースターただろうが電子点灯管だろうが結果は同じである。
ランプのW数に応じ(て予熱時間を調整し)た製品があるが、経験的に(一部パッケージに記載があるが)サークル30Wの点灯時間が最も短くなり、サークル32Wの場合の効果は少ない。20W直管もかなり効果があるが、40W直管の効果は少ない。また、電子点灯管は壊れにくいとパッケージには書いてあるが永久に使えるわけではなく、突然使えなくなり蛍光灯が点灯しない(グロースタータの場合は劣化してくると点灯時間が長くなるがすぐに使えなくなるわけではない)場合が多い(改良される可能性はある)。1割程度蛍光管の寿命が伸びるが、電子点灯管の価格もグロースタータと比較して5〜10倍ほど、灯具自体の寿命が蛍光管を10回も交換するほどあるかと言えば微妙なところだし、蛍光管交換のたびに機械式のグロースタータを交換するのとどちらが得か言い切れない状況である。

私自身は15年ほど前(1997年くらい)にこの製品に期待して、自分で使用する蛍光灯の点灯管は電子点灯管に置き換えていた。当時、サークル30Wのグロースタータは二個で140円程度、2個100円程度の品では耐久性に問題があった。電子点灯管は1個600円弱で、8倍ほど値段差があったことになる。現在(2012年)は、グロースタータは3個で100円で入手でき、品を選べば性能に問題がない(粗悪品もある)。対して電子点灯管は400円以上である。価格差は10倍程度となってしまっている。灯具自体も老朽化し、ランプもじりじりと値段が下がっている中、この差を埋めるのは難しいようで、扱っている店も少なく安売りの対象になることもまずなくなってしまった。残念なことである。


インバータ(電子安定器)

インバータはもともと直流から交流を作る回路のことである。蛍光灯の分野で言うインバータは、半導体を使った安定器の役割をする部品のことである。多くの場合、予熱の時間を決めるグロースタータの機能を併せ持つ。家庭用のFLやFCLを利用した製品でもほとんど瞬時に点灯させることができる。
交流電源から直流をつくり、(周波数の高い)交流を作り直して蛍光管に供給する。利点は先述の点灯の速さのほか、周波数を高くすることでちらつきが抑えられる・電子の流れが激しくなり明るくなり、発振(ジーという音)しにくくなる・一度直流にするため電源周波数に依存しない・また、鉄芯や銅線がないために軽量である・明るさを変える機能をつけることもできる、などがある。
欠点は器具の価格が従来のものの2倍であるにもかかわらず寿命が短いことで、7〜15年で壊れる(最近の製品は改善されている可能性がある。もっとも、悪くなっている可能性もある)。半導体に大電流を流すので、自己の発熱で劣化が進む。壊れたインバータを交換するには本体購入と変わらない出費を要するので、壊れやすさは上に挙げた利点を無駄にする重大な欠点と言える。そもそも半導体は大電流を扱うのには向いていない。大電流を扱えば冷却などに気を配ることになり放熱板などによって大きく重くなる。大きく重くなれば半導体を使うメリットが失われるのである。
インバータ灯具のではじめの頃は、すべてのランプを点灯させたまま明るさを変えているのを見て、蛍光管の寿命が均一になると感心したものだが(実際は40Wや30Wが先に切れる)、蛍光管を5回も替えないうちに灯具が壊れていては全く意味がない。そのようなインバータを冷却することは銅線の安定器よりさらに重要であるはずだが、有名メーカーの製品を見ても排熱に気を使っているように見えるものは少ない。

不調になった器具の代表的な症状は、スイッチを入れても点灯しないことがあるというものである。次第に点灯率が低下し、何回もオンオフを繰り返してまれに点灯するようになる。やがて全く点灯しなくなる。多くの場合、蛍光管の不調を疑って蛍光管を交換し、交換しても症状が改善せず灯具の交換となるが、交換前の寿命の残った蛍光管と、最後に交換した新品の蛍光管が無駄になる。資源節約の観点でも無視できない無駄である。


電球型蛍光灯

電球型蛍光灯は、細い蛍光管を曲げ電球のような形にし、インバータなど点灯に必要な器具もそなえて白熱電球と置き換えることができるようにした製品である。
400円ほどで販売され最も多いと思われる昼光色(D相当)60W相当が約670ルーメンを発生させるのに12ワットを要する(約56ルーメン/W)。5000から6000時間持つことになっている。千円するプレミアムタイプで730ルーメン/10W(73ルーメン/W)で10000〜12000時間の寿命。電球色はルーメンの値が10%高くなるが、白色や昼光色の方が明るく見える。電球の1/5の消費電力で5倍長持ちといって差し支えないであろう。

同一のグレード品であれば暗いものほど最大の明るさになるまでに時間がかからない傾向である。しかし、プレミアムタイプは最大の明るさになるまでに時間がかからず、消費電力が小さく、寿命が長く改良されていて、頻繁に明滅する箇所にはグレードの高いものを使用するほうがメリットが大きいように思う。ただし、製品、メーカー(電球に強いメーカーが良いとは限らない)、ロットの差(外国産であるが故か)が意外に大きく、安い製品が即座に明るく点灯することもある。

白熱灯用の既存の器具が使える。特徴としては白熱灯器具の利点と欠点、蛍光灯の利点と欠点をあわせもつ。新規に設置する場合は灯具が安価で済む場合が多いが、電球型蛍光灯の専用に設計(電流量や排熱の設計が甘い)されている場合は本来の白熱電球を利用できない。
最も強力な利点は、熱に弱く壊れやすいインバータが電球自体に内蔵されているために定期的に交換される点である。蛍光管の消費電力が10W程度で電流が小さく、さらにインバータの寿命が蛍光管程度でよければ小型化できて安価に生産もできる。実際に、この二者はどちらが先に寿命が来るかは製品や使われ方で異なり、蛍光管の寿命では点灯するまでの時間が延びていき、やがて電極付近が赤く光ったまま点灯に失敗する。インバータでは発振(ジーという音)やチラつきがおき、急に点灯しなくなることが多い。しかしユーザーにとってはどちらも関係なく電球を交換すればそれで済む(電球に内蔵された以外の部分が壊れることはほとんどない)。
欠点は、熱を生じなければ蛍光管が発光しないために点灯までに1秒程度を要すること、(点灯直後は約6割の明るさ)点灯から最大の明るさになりまでに一分程度が必要なこと、冬期には暗くなること。重さが問題になる場合もある。また、白熱電球よりも値段が高い(5倍程度である)が、それ以上に寿命が長く(おおむね10倍程度である)問題は少ない。
人間の都合でできた二次的な欠点は、安価な製品はインバータの設計が悪くすぐ壊れたり発振したり光量の安定までに時間がかかったりする、全体の形を電球に近づけるために蛍光管をやたらに曲げて寿命や特性を犠牲にしている(光量が最大になるまでの時間が長くなる)、白熱球とは違い反射光が不自然かつ暗いのに無意味に電球の色を再現している点などが挙げられる。後者の2点は開発者のこだわりによるところが大きいように思う。例えば、電球を模した外側のカバーなどは無意味だが、最近までカバーのない製品は少なかった。
いずれにしても、電球に無理に似せようとせず、蛍光灯の特性を活かした設計のものが望ましい。具体的には、蛍光管をなるべく曲げず(らせん状ではなく直線状になっているものがよい)、カバーなし、発光色は白色または昼光色がよいが、名の知れたメーカーのものを買っておくのも高価ではあるが失敗しない秘訣である。



LED

LEDとは

LEDは電流を光に変える半導体である。1995年頃から青色が出回り始め、赤緑青の光の三原色が揃ったため、用途が拡大した。
2012年現在、まだ壊れていない蛍光灯をわざわざ処分して置き換える価値のある照明器具は作られていない(そもそも光の量あたりの消費電力が蛍光灯より大きいため、電気代の差分で価格の高いLED製品の価格差を埋めることが不可能である)。白熱灯からの置き換えでも蛍光灯を選択せずLEDにするメリットは少ない。しかしメーカー側は特に電球型蛍光灯の開発をわざわざ手抜きして(特に安価な電球型蛍光灯は《それまで高価だったプレミアム製品を安価に生産するのではなく》効率の点で性能が悪化したものになっている)能力の劣る電球型LEDを売りたいように思える。
LEDは暗いものの発熱は無視できるほどであるが、明るいもの(又はたくさん並べたもの)の消費電流量は大きく発熱はばかにならない。また灯具またはランプの中に直流電源を発生させるスイッチング電源を内蔵する必要があり、取り出せる電流を大きくすれば電源部の発熱も大きくなる。LED素子を直列にすれば(電圧が上昇して)電流が低下し、電源の設計が簡単になるが、直列につないだLED素子のいずれかが切れるとその列のLEDが全て発光しなくなる。


売られている製品

電球型LED

LEDの素子を基板に並べて、直流電源を供給する部品やレンズをそなえて電球の形にしたものである。
千円ほどで販売され最も多いと思われる昼光色(D相当)40W相当が約600ルーメンを発生させるのに7.5ワットを要する(約80ルーメン/W)。三千円するプレミアムタイプで850ルーメン/11W(77ルーメン/W)でどちらも約40000時間の寿命。電球色はルーメンの値が20%低くなり、やはり昼光色の方が明るく見えるが、2割違うかと言えば微妙なところである。

メーカーが言う「相当」だけを参考に比較してみよう。
D色相当では40W相当品で
 白熱  該当なし
 蛍光  440ルーメン/7W    (63ルーメン/W) 千円
 LED   600ルーメン/7.5W  (80ルーメン/W) 千円
電球色相当で
 白熱  480ルーメン/36W   (13ルーメン/W)
 蛍光  480ルーメン/7W    (68ルーメン/W) 千円
 LED   480ルーメン/7.5W  (64ルーメン/W) 千円

D色60Wでは
 安蛍光 650ルーメン/12W   (54ルーメン/W) 400円
 高蛍光 730ルーメン/10W   (73ルーメン/W) 千円
 LED   850ルーメン/11W   (77ルーメン/W) 三千円
電球色相当で
 白熱  810ルーメン/54W   (15ルーメン/W)
 安蛍光 720ルーメン/12W   (60ルーメン/W) 400円
 高蛍光 810ルーメン/10W   (81ルーメン/W) 千円
 LED   650ルーメン/11W   (59ルーメン/W) 三千円

スペックだけで比較した場合、40W相当の昼光色だけ優秀で、ほかはそれほどではないことがわかる。
また、電球色40Wでは規格のように性能を合わしているのに、60W相当品ではLEDの性能が劣っているところから、電球型の明るいものはつくりにくいことがわかる。

光源として使われる白色LEDは、一般に短波長を発生させる素子(青と緑を受け持つ)と長波長の素子(赤を受け持つ)の2つの発光ダイオード(半導体)が組み合わされている。出される光は蛍光灯と同程度(かそれ以上)にヒトの目に見えない部分を省かれており、消費電力の低減に生かされている。利点は瞬時に最大の明るさを得ることができることである。しかしヒトの目に見えない光が発射されていないために、(蛍光灯と同様、またはそれ以上に)演色性はよくないのが欠点。ランプを見ると眩しいのに、いまいち部屋が明るく感じない。
また、LEDは小型で光源としては点といってもよいほど小さく光量も少ないために、基板に並べて光量をかせぐ必要がある。しかし基板に並べれば板の片方にしか光を発射しない。つまり、(リフレクタ付きの電球のような)ソケットと逆方向にしか光を出さない構造になっている。したがって光を出す方向の中心は明るく周りが暗くなり、白熱電球や電球型蛍光灯と単純に明るさを比較できない。得意分野も違う。60W電球程度の明るさでは、大まかに言って白熱電球の1/4、蛍光灯の1.2倍の消費電力となる。
このようなことになっている原因は、LEDは省電力であるというイメージだけを利用して高価であっても付加価値ということで電球を売ってしまおうという考えにある。しかし、(蛍光灯のインバータの部で述べたとおり)半導体は基本的に大電流に向いていない。LEDは二倍の明るさにすれば二倍以上の発熱を伴うのである。したがって、懐中電灯ほどの明るさであれば問題はなく、実際に省電力だが、電球ほどの明るさにすると多くのエネルギーが熱として失われている。また、自己の発する熱で劣化も早める。
そもそも、LEDの特性を考えると電球型にするメリットがない。
明るさを上げるために素子数を増やしたり電流を増やしたりすれば熱が発生する。熱は消費電力の増加させ、耐久性を減少させる。電球型である以上、断面積を増やすことができず冷却のために素子の間隔を取ったり、電源部を離したりすることができない。省エネを謳った製品の特性上、電球型蛍光灯より消費電力は低く設定し、寿命を長くする必要があるから、現状(2012年現在)では明るさを犠牲にし、妥協した製品となっているのである。実際に店頭で製品を見ると、電球型蛍光灯の主力は白熱球の60W相当品だが、LEDは40W相当品(消費電力10W以下)で、電球基部にフィン(放熱板)が付けられている(しかし電球が露出している灯具は少ないから、フィンが十分に働いているとは考えにくい)。60W相当の明るさにすれば蛍光灯式より消費電力は大きくなり、寿命は下回ることになるはずだ。
これらの問題点を解消するにはランプユニットを大型にして冷却を容易にするしかない。

このように項目を通して「しかし」を連発する羽目になるのは、そもそもの、さらにそもそもの話、LEDが照明用の光源に向いていないことによる。
物に反射した光の色が鮮やかでなく(おまけに暗く感じる)、明るくしづらい。ただし、電圧をかけると発光までの反応時間は短い。このような光源は、十分に小さい規模のもの(小型懐中電灯など)か、光源じたいを見る用途、つまりパイロットランプ、信号機、ディスプレイなどに利用するのが良いのである。

私は、電球型のLEDを真面目に考えるのであれば、冷却ファンをつけるべきではないかと考えている。
例えば、60W相当の電球型LEDは11Wだが、CPUで言えばセレロン533Aに相当する。リテールのセレロン533Aには5cmのファンがついている。私が今文章を書いているパソコンはAtomの1.6GHz×2コアでCPUだけで8Wだが、やっぱりファンがついている。半導体を長持ちさせるには、熱をいかに逃がすかであると思っている。


LEDシーリングライト

素子が器具に埋め込みであるために素子の寿命が器具の寿命となる。寿命と明るさがトレードオフ(どちらか一方しか得られない)であるが、電球のように断面積に制限がなく、製品の発想としては悪くないと思う。
日本で製造していないものが多いが、一部の製品は素子ごとのばらつきをそのまま放置して製品化している。灯具なのだから(全部の素子が点灯しなくても)明るくなれば良いという発想である。そういった製品は新品購入直後は明るいが、設計が悪いと数日で1割程度の素子が焼損してドット抜けのような症状を起こす。


蛍光管型LED

この製品は、電球型LEDのすべての欠点(暗い、演色性が良くない、高価、下にしか光を出さない)を持つ。また、重量があるため特に40型のバネで保持(回して固定するのではなく押し込んではさむタイプ)では振動で落下する危険性が高まる。さらに、蛍光灯灯具は安定器と蛍光管が直列につながているので、LEDが点灯する上で無意味な安定器が電力を消費する欠点を余分に持つ。


蛍光管型LED専用の(安定器を持たず通常の蛍光灯が使用できない)灯具も売られている。しかし新しく購入するならこんな中途半端な製品を買わずにほかの灯具を買うのが良いし、蛍光灯からの置換えを考えるのであれば蛍光灯を使い続けるほうが良い。
導入意義があるとしたら、灯具を設置するスペースが細長く直管蛍光灯のような製品しか設置できない場合に限られる。