キーボード
(原研究室分室)



コンピュータと人間のインターフェイスとして、人間側が簡単にしようできる物は、目、耳、手であろう。キーボードは文字をコンピュータに入力するための道具であるが、人間側からすると最も手軽なシリアル出力のインターフェイスだ。
ま、そんなことを考える人はあまりいないと思うが、今も昔も個人でコンピュータを買えば必ずさわる物である。自分にあった物を見つければパソコンライフも多少豊かなものになる、はず。



用語解説

クリック
キーを押し込んだとき、ある深さで生じる音のこと。カチカチ、という音。基本的にメカニカル、メカニカルタッチキー特有だがない場合もある。

クリック感
キーを押し込んだとき、ある深さで戻ってくる感覚のこと。

メカニカルキー
各キースイッチを独立したプッシュスイッチにより構成したキーボードのこと。スイッチの作り方で、キーを押し込む途中でカチと音のするタイプ、しないタイプがある。また、手にスイッチの入った感覚が戻るものもある。いずれもメカキー独特の操作感覚だ。最近の製品はメカキーであることを強調するためかわざとらしくカチカチ音がするものばかりだ。一般に耐久性に優れること、素直なキー応答が利点。高価なことが欠点。

メンブレンキー
基盤やプラスチック盤に印刷した電極スイッチを、ゴム膜を利用したバネの上から押し込むことで接触させるタイプのキーボード。ゴム膜の作り方で、キーを押し込む際ポコッというようなクリック感の生じさせるもの、そうでないものができる。ゴムバネも全部くっついた一体型であったり、単独であったりする。一般にはメカキーに比べて安価であるが、上手に作ったモデルはよい操作感を持つ。

メカニカルタッチキー
基盤やプラスチック盤に印刷した電極スイッチを、金属バネで支えたキートップを押し込むことで接触させるタイプのキーボード。安価にメカニカルキーの操作感を実現できるはずだが、どちらともいえない感じで両者の利点と欠点を足して2で割った感じだ。当然製品によってまちまちだがモデル数は多くない。

メカニカルテイストキー
これは私の造語である。キートップはゴム膜で支え、クリックを生じさせるために金属片を仕込んである。こういったものを「メカニカルタッチ」として売っていることがあるらしい。基本的にメンブレンタイプなので、たいしたことのない操作感に、やかましいクリック音を持つという両者の欠点を併せ持ったような製品のはずである。




98配列

VX付属
堅いクリック音と不明確なクリック感。キータッチは重く丈夫だが、デカく重量がある。キー配列が後期のものと違うのでたまに困る。

UX付属
弱いクリックとクリック感。F系の物とほとんど同じ形状で少々キータッチが重い。カナやCapsがロック式、ファンクションキーが10個、Winのドライバと相性が悪い、などが欠点。DOSでの使用ではタッチ、大きさ、配列ともに最も優れたキーボードだろう。ただし現在は黄ばんでいない程度のよい品を見つけるのはまず不可能と思う。

Fシリーズ付属  ベストオブ98配列
キーは柔らかくクリックは不明確。クリック感もない。Winを使う機械で使うならこのあたりが最もマシ。ただしケーブル延長は必須だろう。当時はコンピュータは耐久消費財で、なおかつ低価格化などという言葉はほとんど無関係だったため10年以上の使用に耐える構造であり、飲み物をこぼしたり継続的にたばこの煙を吹きかけた場合以外故障はほとんどない。

Ap付属(直角コネクタ)
メンブレンタイプに変更となり、キーは柔らかくクリックなし、クリック感あり。キータッチがやや悪化し、奥まで決まらず9割ほど押し込んだところでフニャフニャとゴムに押し戻された感じがあるが許容範囲だと思う。キートップの加工もとれやすく、半永久的に使えるキーというわけではない。コードにカールがあり、コネクタが前面にあるためL型である。

An、Ap2付属(直コネクタ)
ゴムに押し戻される感が強くなり、キータッチとしては悪化したがまだ実用的。キーのインタフェースが本体背面にある機種には、L型コネクタのキーは使いにくいのでAp2/An付属が最も良いキーと思う。経年劣化もするし故障もする。

Cf付属(カールコード)
109キーに準じた作りでWinキーがある。タッチはAnやAp2のものに準じる。ただし、年代が同じでも中堅機と安いモデルが同じ物が付属していたかどうかは未確認である。

V10付属(ストレートコード)
クリック感が減少。キーベースの安定性が悪くなりキートップがぶれる。ゴムが押し戻す感じがわかりにくいほどベースの安普請がバレバレで使っていて疲れる、キートップがすぐツルツルになる、黄ばむ。

USB-98配列
NXになりキーが明確なクリック感を持つ物に変更。ただし軽い。キータッチはV10のものより「いくらか」マシだが本体の質感はさらにダウン。NXの独自アーキテクチャ用でAT互換機や一部のNEC機では動作しません。なお、マウス端子がPS/2のものが初期型でUSBの物が後期型。USBは単なるハブなので電源さえ足りればどんな機器でも動くが、PS/2にはホイルなしマウスしかつかない。



101キー

センチュリー製
日本でも何モデルかは出荷されているATマシンの標準配列キーボードだが、さすがに日本で需要が少ないため妙なものは存在しないようだ。私が触ったものは強いて言えば5576-B01と似たタッチで、しかも5576-B01にあるキートップがぶれる感じが少なかった。



106キー

IBM 5576-B01  ベストオ106
クリックがなく、明確なクリック感。キーボード全体が緩やかに反っている。メンブレンタイプ。一部で人気だが一方ではIBMのキーボード神話の終焉という人も。中身はミツミ製。市場価格も安いし、クリックがないものがよい場合は良い選択だと思う。ただし古いものと新しいものではタッチが全然違う。お気に入りの場合、スペアを持っておくのが吉。最近のメンブレンタイプのものよりキーが重く、重量がありキートップのぶれが少ない。跳ね返りが速くキーを押し込んだ際のゴムを押しつぶした感じが少なくすっきりした操作感だ。一番手前のキーは全て凸型で、残りは凹型。

キヤノン KB106−JDF6
大きなクリック音と明確なクリックがあり重い操作感。メカスイッチ。メンブレンタイプよりやや厚手の本体で、やや青の入ったグレーと角張ったデザインは硬派に見える。他のメーカーの物もある。キーを叩くと5576-B01の三倍はやかましく、タイプする人にストレスは少ないが、周りの人に迷惑がかかる。ケーブルがやや短すぎ、本体の裏にまわすには足りないかもしれない。右上にPowerというLEDがある。ちなみに、配列は形式名の通り106キーで、5576-B01とキーの大きさも含めて全く同じだがCtrlは凹型。またAltキーの内側が欠けているタイプ。

タイプオブデッドコントローラ
テンキーがないため番外編。109のデスクパワー付属とにたような操作感。筐体にはめられていて位置を変えられないかわりに安定性は抜群。ただしストロークが短いので肩が凝る、などなど、私がタイピング下手ということも相まって印象はよくない。

ATキーボード
2台は別タイプだが、どちらも古いものらしく豪華な印刷の箱があったらしい。1995年当時、2万以下はメンブレンタイプだったらしいが、ロットが少なかったためか現在から考えると結構高価である。安物ではないが経年の劣化によってキータッチはかなりゴムっぽく、シャープさに欠ける。中古のキーで、よく使われているのものは「A」のキーが劣化していることが多いのですぐわかる。こういう物にさわっておくと、メーカー付属物がいかに良い物かが分かる。

PS/2キーボード
106キーの頃は486全盛である。ブランド物以外は多くなく、当時高価だったが新品の品質は悪くなかった。しかし、5年以上経過した物はくたびれてしまっている物ばかりで、更新するべきであろう。ただし、メカニカルキーである場合もあり、逆に価値が出た物があるなどおもしろい分野でもある。


106キー総評
日本語変換時に頻繁に使用する無変換キーが大きく、Alt押した際にWinキーを引っかけることがないので日本語変換に最も向いたキーレイアウトではないかと思うが、一般にはすでにゴミ同然に扱われている。私は文字を主に打つ場合とそれ以外でキーを使い分けるようになってしまった。キーの大きさがモデル間で違うということも少なく、純粋にキータッチのよい物を選べる。新品も何モデルか出荷されているらしいが基本的に中古購入になるのでメンブレンタイプはコンディションに気を使うべきだろう。メカキーは通常高価だが、ジャンク店にまれに安価ででる場合があるのでキーボードハンティングのし甲斐のあるジャンルではないか。



109キー

5576-B05  ベストオブ109
B01よりもクリック感が不明確となり、少々ゴムの戻ってくる感覚が強くなった。私のAT互換機用のキーボードの原点。OEMらしく1999年頃の安物(AMDのCPU)価値星に全く同じ形の廉価版鍵盤(裏が肉抜きされ軽くなった)が付属していた。当然、鉄板の仕込んであるIBMブランドの方が良い物だ。109キーをどうしても使いたいなら安く手には入った場合結構いい選択だと思う。ただし2年ほどでキータッチが低下してくるので程度のいいものでなければもったいない。B01と比較して、キーが全て凹型、キートップのエッジが鋭すぎる、さわり心地が安っぽい、のが欠点。

コンパック付属
クリックなし、ごく弱いクリック感。質感はかなり高い。跳ね返りが遅いため早打ちの限界は低いと思う。コンパックのキーボードは、モデルによって形状、キータッチが全く違い、いい物と悪い物の差が激しい。インジケータのアイコンは少しわかりにくいと思う。サーバ付属の物は結構いい物である。

FUJITSU FMV-KB321
クリックなし、ごく弱いクリック感。本体重量がないから、叩くタイプの人には向かない。ワイヤレスバージョンもあるがそちらの方は重量があるため幾分かマシかもしれない。ストロークが短く好みが分かれる。中古品は、カバーが掛けられていた品は程度がよいが、そのほかは手を出すべきではない。

NXのもの
クリックなし、明確なクリック感。もう少し筐体の剛性が高ければ質の良いキーだったかもしれない。現在でもMateなどに付属しよく目にする。キーは軽いが、操作した感じはお世辞にも高級とは言い難い。

PS/2キーボード
有名ブランドでないものは、ちょうど109キーを生産していた時期が自作パソコンが爆発的に売れ出した頃にあたり、相当品質にばらつきがある。また基本的に耐久性がなく、4〜5年を経過すればゴムが劣化し、文字を打つ道具としては使い物にならないのでコンピュータ更新時に捨ててしまって問題はないだろう。新しく購入するときは用途を考え、ネットサーフィンが多いときにはマウスに金をかけ、文字をよく打つ場合はキーボードに金をかければいい。


109キー総評
Windowsの使用を前提とした最もベーシックなキーボード。年代は95年下半〜98年に最も集中している。106キーがIBMの5576-A01を手本に作られたのとは異なり、109キーは5576-B05と同じレイアウトとは限らず、無変換キーが小さかったりスペースキーが大きかったりカーソル部分が右Ctrlにくっついていたりとバリエーションがある。109キーが作られ始めた頃はコンピュータの価格が急落した頃と重なり、品質の悪い割にこき使われた物が多いため中古の品質はよくない。メカキーがほしい場合は最近発売された物しかないが、メカニカルスイッチを使用しているというだけだったり通常のメンブレンタイプに金属クリックを追加したものであったりするので現品を確認し、納得の上購入してほしい。いずれにしても相当出費がかさむはずだ。



111キー

ロジクールキーボード
基本的に多機能なものが欲しい場合はいいと思うが、私としては文字を打つ機能しか使わないのであれば逆にキーが少ないものの方がよい気がする。キータッチは、明確なクリック感、キーが戻るときにキーから押し戻しがある少しクセがあるタイプだと思う。このタッチのファンも多いが、使いこなさないと疲れるのではないか。

PCステーション付属
クリックなし、明確なクリック。タッチは軽いが8割ほど押し込んだところでゴムに押し戻された感じがある。すでに素材のプラスチックからして安っぽい。構造もあまり出来がよいとはいえず、叩くように操作するとそのうちキーボードがきしむようになってくる。落とすなど御法度だ。また、埃っぽいところに置いておくとキーが利かなくなることもある。見栄えのみ普通。

VARUESTAR NX(ブック付属)キー
クリックなし、不明確なクリック感。JとFが「ぽっつり」タイプではなく「反り具合が違う」タイプなので98からの移行でなければとまどう。キー配列が標準と少し違う。キータッチは悪くはないがキートップの劣化は結構速く、ツルツルになる。

小型デスクパワー付属
クリックなし、弱いクリック感。ブックNX付属とほとんど同じである。ストロークを十分とってあり、使用感に問題はないが小型にしてあるためカーソルキーの位置が悪い。本体を小型にするのは大いに結構だが、ノートでもあるまいしキーやマウスを必要以上に小型化する必要がないというのが私の見解なので、メインで使おうと思った場合は取り替え必至。

PS/2キーボード
2千円以上であれば通常使用に問題がないが、5千円程度までは明確な品質向上がない。店頭に並ぶ新品を買う場合は安物をキータッチと重さを確認した上で購入するか、キーボードに充てられる金額がそれなりにある場合はマイクロソフトやロジクールのものを購入するのがよいと思う。普段から文字を打つのであれば111キーは買わず、1万円弱はキーボードに充てたい。


111キー総評
年代は98年以降。最近は111以上のキーを持つ物が多い。キーボード単体で売っている物は109と111のどちらもあり、店により割合が違う程度だ。追加されたアプリケーションキーを使いこなしている人がどれほどいるかは疑問だが、111キーともなると文字入力のための鍵盤というよりも、OS(Windows)やソフトを操作するためのコントローラという要素が強いように思う。また、近年は3年を経ずしてコンピュータが陳腐化することと、以前よりキーボードを使う機会が減ったため、付属品であるキーボードもそれ以上の耐久性が与えられていないことも知っておく必要がある。



−オマケ
PS/2ホイールマウス

ECM-S5004  ベストオブマウス
あまりに有名なミツミのマウス。本体はクラシックなデザインで、結構大柄。内容の割に高価な上、現在ではなかなか手に入らないのが欠点か。本体は手全体ではなく、親指、薬指と指の付け根あたりで支えて操作し、引っ張るタイプのホイールは中指よりも人差し指の方が操作がたやすく持ち替えが必要。しかし小規模な文書制作には力があまり必要なく、便利だ。

MO09
最近のAptivaに付属のマウス。大柄ののホイルは中指で楽に操作ができ、力加減でスクロール量を変えられるタイプで、高速スクロールができることが特徴。ワープロやスプレッドシートなど文書「制作」には操作性が最悪だが、「閲覧」には限りなく便利。こういったものもホイルマウスの一つの回答だろう。ただし「ホイル押し」が別ボタンになっていて、詰めがイマイチ。

マイクロソフトマウス
普通。これを使えないと他人のコンピュータの保守を依頼されたとき困る。もともとホイール込みでデザインされたものでなく、回すタイプのホイールは無駄な動きが多くなるので操作の迅速性は今ひとつで肩も凝る。安い物は左右対称、少々高価な物は右手き専用で利き腕以外での操作性は低い。

ロジクールマウス
ここのところはミツミのホイールマウスに代わりメーカーもののコンピュータにOEMでつけられ、最近よく見るマウス。ホイールの使用を前提としてデザインされているらしく、高さが低く手にすっぽりと収まる形状の本体についたホイールは中指の位置にぴたりとくる。マウスを主に使い、長時間操作する作業の場合は楽かもしれない。マイクロソフトマウスに操作は準じる。右利きの人のことしか考えてないような反ったデザインである。